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EUDRがタイ産天然ゴム・パーム油に迫る — 商社・メーカーのサプライチェーン、デポの記録は間に合うか

タイのドリアン集荷場(デポ)は過去2年、価格紛争という問題に向き合ってきた。「その日、どの農家に、どのロットで、いくらと提示したか」を証明する仕組みだ。しかし天然ゴムとパーム油のデポは、もっと難しい問いに直面しようとしている。しかも今度質問してくるのは支払い時の農家ではなく、EUの通関当局だ。答えを誤れば、口論では済まない。EU域内売上高の最大4%の罰金、貨物差し押さえ、市場アクセスの一時停止が科される。

これがEU森林破壊防止規則(EUDR)であり、天然ゴムとパーム油という、タイの主要農産物輸出品目2つが対象に含まれる。

EUDRが実際に求めること

2027年1月以降、天然ゴムまたはパーム油をEU市場に流通させる事業者は、以下を証明するデューデリジェンス声明書(DDS)の提出が義務付けられる。

  • 森林破壊フリー — 2020年12月31日以降に伐採された土地で栽培されていないこと
  • 合法生産 — 生産国の土地・労働法規に準拠していること
  • 位置情報付き区画までのトレーサビリティ — 地域平均ではなく、地図化された特定の区画であること

大規模事業者の対応期限は2026年12月30日、中小事業者は2027年6月まで猶予がある。どちらの期限もそう遠くはない。

日系商社・メーカーにとっての意味

タイ産天然ゴムを調達する日系タイヤメーカーや商社にとって、これは自社が直接EUDRの対象になるかどうかだけの問題ではない。最終製品がEU向けサプライチェーンに組み込まれていれば、川上のトレーサビリティが自社の取引継続条件になる。加えて、経済安全保障推進法が求めるサプライチェーンの強靭性・可視化の流れとも重なる領域であり、原材料調達の追跡可能性は既に日本企業のリスク管理項目に入りつつある。

タイのゴム・サプライチェーンが抱える構造的リスク

タイには約170万戸の零細ゴム農家がおり、国内天然ゴム生産の約9割を担う。区画は数百万に分散している。従来、ゴムは仲買人を経由し、複数の農家からのゴムを混合してから加工工場に渡ってきた。原料の集荷としては効率的だが、どのキロがどこ由来かを証明することはほぼ不可能な構造だ。

パーム油も規模は異なるが構造的には似た問題を抱える。分散した零細農園が少数の搾油工場に供給し、原料が混合される時点で来歴情報が失われる。

タイゴム公社(RAOT)のThaiTracや、民間プラットフォームのTraztruなどが区画の位置情報と土地権利の検証に取り組んでいる。だがこれは問題の半分——農地側——を解決するに過ぎない。もう半分は、ゴムが農地を離れた後に起きること、つまりどのロットがどの出荷にひも付き、その連鎖が監査に耐えるかという点だ。

Chain of Custodyの欠落はデポの問題、農地の問題ではない

DDSは農園の衛星画像だけでは成立しない。位置情報付き区画から特定の輸出出荷まで、途切れのない文書化されたつながりが必要だ。そのつながりが通る場所こそデポ——入荷・等級選別・販売の拠点であり、SimplicoがsimpliDepotで既にロット追跡を構築している領域そのものだ。

simpliDepotの中核モデル——入荷時に連番で発行されるロット番号、恒久的にスナップショットされる価格と等級、買い手向け販売へのFIFO配分、特定ロットに紐づく請求書——は、DDSのChain of Custodyが必要とする配管とまったく同じだ。「どの農家のロットがどの買い手のトラックに載ったか」に答えるために作られたシステムであり、これは今EUの通関当局が天然ゴムとパーム油について問うているのと機能的に同じ問いである。

現時点でsimpliDepotにないのは、入荷時点での区画位置情報の取得と、EUDR形式のDDSエクスポート機能だ。これこそがゴム・パーム油デポが次に必要とするモジュールである——入荷時に農家記録へGPS位置情報を紐づけること、そしてデポのロットデータをEU Information Systemが求めるDDS形式にマッピングするデューデリジェンス出力機能だ。

デポ運営者が2027年6月までにすべきこと

  1. 位置情報連携より先に、まずロット単位の入荷追跡を稼働させる。 どの農家がどのロットを供給したか答えられないデポには、後から地理データを紐づけるChain of Customy自体が存在しない。
  2. 区画の権利情報を、非公式であっても入荷時から記録し始める。 出荷量が増えてから遡って整備するコストは、最初から記録するコストよりはるかに高い。
  3. コンプライアンスの境界を農地ではなくデポと捉える。 ThaiTracのような土地マッピングの取り組みは区画側を解決する。しかし、その区画のゴムがそのコンテナの中身と同一であることを証明する役割は、依然として誰かが担う必要があり、その連結点がデポにある。
  4. 中小事業者の猶予期限を遠い話と思わないこと。 2027年6月は、取引先がその半年前にDDS対応済みロットを求めてくるまでは遠く感じる——取引先自身のEU顧客が準備期間を必要とするからだ。

ゴムだけの話ではない

simpliDepotのロット・等級・FIFOモデルはドリアン専用にハードコードされてはいない。構成情報であり、固定ロジックではない。ドリアンデポを動かすシステムと同じものが、品種カタログを変えるだけでゴム、パーム、マンゴーのデポを動かす。EUDR対象品目であれば、この構成の柔軟性こそが、区画レベルのトレーサビリティ追加を作り直しではなく範囲を限定した拡張にする理由だ。

よくある質問

EUDRはすべてのゴム・パーム油輸出に適用されるのか、大規模事業者だけか?
両方に適用されるが、期限が異なる。大規模事業者は2026年12月30日まで、中小事業者は2027年6月まで。要求されるDDSと位置情報の内容自体は同じで、猶予期間は要求水準を下げるものではなく、検査のタイミングを後ろ倒しにするだけだ。

すべての農家が正式な土地権利証を持っていなくても、デポはEUDR対応できるか?
土地権利証の整備はより困難で時間のかかる問題であり、多くはデポの管理範囲外にある——ThaiTracのような取り組みが農地レベルで解決しようとしている領域だ。デポ側は、権利証・座標・マッピングされた境界線など、存在する区画情報を入荷時点で取得し、販売までロットに紐づけておくことで、かなりの部分をカバーできる。

マンゴーはEUDRの対象か?
対象外である。EUDRの対象品目は牛、カカオ、コーヒー、パーム油、天然ゴム、大豆、木材だ。マンゴーデポはこの規則そのものには直面しないが、同じロット追跡の基盤は、あらゆる等級付き農産物デポが抱える価格紛争や買い手トレーサビリティの問題を解決する。

既にExcelでロット追跡をしているが、DDSには不十分か?
ExcelはDDSが必要とする項目自体は保持できる。しかし、すべてのロットに入荷時点の価格が固定されることを強制せず、入荷連番の欠落を防がず、「後から編集されていないと証明できるか」という監査上の問いに耐える記録を生成しない。DDS提出は、まさにその欠落がコストに直結する文書の一つだ。


天然ゴムまたはパーム油のデポを運営しており、EUDRの期限が書類整備より先に迫っているなら、デポ単位のトレーサビリティ構築について一度ご相談ください