TAKとWazuhを連携し、リアルタイムの脅威認識を実現する

🧭 はじめに

今日の脅威は、デジタル空間と物理空間の両方で発生します。
従来のSOCダッシュボードだけでは、現場で何が起こっているかを即座に理解することが難しい場合があります。

もしネットワーク上の侵入やマルウェア検知が、地図上の赤いアイコンとしてリアルタイム表示されたらどうでしょう?
それを可能にするのが、Wazuh(オープンソースのSIEM/XDR)と TAK(Team Awareness Kit) の連携です。

本記事では、この2つのシステムを組み合わせることで、どのように「現実に役立つ」脅威可視化が実現できるかを紹介します。


⚙️ 1. なぜTAKとWazuhを統合するのか

目的 TAKの役割 Wazuhの役割 統合による効果
状況認識 現場・部隊の位置をリアルタイム表示 サーバ・ネットワークの脅威を検知 サイバー攻撃を地図上で可視化
インシデント対応 複数チーム間の連携 アラート・ログ解析 迅速な意思決定と現場対応
コマンド可視化 地理的なマップ表示 技術的な脅威データ 統合的な「共通運用図」(COP)

🧩 2. システム構成(アーキテクチャ)

WazuhとTAKは直接連携できないため、軽量なブリッジサーバ(Python製)を介して接続します。

graph TD
A["Wazuh Manager"] --> B["Webhook / Integration Module"]
B --> C["Python Bridge Service"]
C --> D["TAK Server(REST / CoT UDP)"]
D --> E["TAKクライアント(ATAK / WinTAK / WebTAK)"]

処理の流れ:

  1. Wazuhが高重大度アラートを検知
  2. WebhookでJSONをブリッジサービスに送信
  3. PythonブリッジがCoT(Cursor-on-Target XML)形式に変換
  4. TAKサーバが受信し、マップ上にイベントを表示

🧠 3. Pythonブリッジの例

import requests, json
from datetime import datetime

def wazuh_to_tak(alert):
    lat = alert.get('geo_lat', 35.6895)
    lon = alert.get('geo_lon', 139.6917)
    cot = f"""
    <event version="2.0" type="a-h-G-U-C" uid="{alert['id']}"
           time="{datetime.utcnow().isoformat()}Z"
           start="{datetime.utcnow().isoformat()}Z"
           stale="{datetime.utcnow().isoformat()}Z" how="m-g">
        <point lat="{lat}" lon="{lon}" hae="0" ce="9999999" le="9999999"/>
        <detail><contact callsign="WazuhAlert" />
                <remarks>{alert['rule']['description']}</remarks></detail>
    </event>"""
    requests.post("https://takserver.example.com/api/cot",
                  data=cot,
                  headers={"Content-Type": "application/xml"},
                  verify=False)

Wazuhの integration モジュールを使い、重大度(Severity)7以上のアラートのみを送信するのが推奨です。


🛰️ 4. サイバー攻撃に「位置情報」は必要か?

答えは 「ケースによるが、非常に重要」 です。
特にOT(産業制御)や現場対応が関係する場合は、位置情報が不可欠です。

状況 位置情報の目的 情報ソース
OT / SCADAシステム攻撃 PLCや制御装置を物理的に隔離 資産DB(Asset Inventory)
データセンター侵入 どのラック・部屋かを特定 CMDB / スイッチポート情報
クラウド攻撃 どのリージョン/ゾーンが影響を受けたか クラウドメタデータ
エンドポイント感染 所属拠点を特定して対応 MDM / Wi-Fiコントローラ

🌍 5. 情報強化(Enrichment)とフィルタリング

graph TD
W["Wazuh Alert"] --> E["Enrichment Service(CMDB + GeoIP + MDM)"]
E --> F["フィルタリングと信頼度スコアリング"]
F -->|信頼度高| T["TAKへ送信(CoTイベント)"]
F -->|信頼度低| S["SOCによる手動分析"]
  • 各アラートに location オブジェクトを追加(lat/lon、サイト名、信頼度など)
  • Severity ≥ High かつ Confidence ≥ 0.7 のものだけをTAKに送信
  • 地図上ではアラートの重大度に応じてアイコン色を変える(例:赤=重大、橙=警告)

⚠️ 6. 実装上の課題と解決策

課題 解決策
公式コネクタがない Webhook+Pythonブリッジを構築
位置情報が不足 CMDB / DHCP / GeoIPから補完
アラートが多すぎる 重大度と信頼度でフィルタリング
TAK API認証が複雑 トークンをVaultや環境変数で安全管理
個人デバイスのGPS扱い マスキングしてプライバシー保護

🔐 7. 実際のユースケース

  • 軍事・防衛機関: サイバー攻撃地点を作戦マップ上に表示
  • 重要インフラ(電力・通信): SCADAノードの異常を地図上に可視化
  • 緊急対応センター: サイバー・災害情報を統合表示
  • 企業SOC: 経営層向け「リアルタイム脅威マップ」を生成

🧩 8. Wazuh+TAK統合のメリット

✅ サイバーと物理の脅威を同一画面で把握
✅ SOCと現場チームの連携を強化
✅ 統合的な状況認識と迅速な判断
✅ オープンソースで低コスト導入可能
✅ 防衛・公共・産業用途にスケール可能


🧠 まとめ

WazuhとTAKの統合は現実的かつ効果的なアプローチです。
位置情報を付加し、高信頼度のアラートのみを地図上に表示することで、
「サイバー脅威を地理的に可視化」し、リアルタイムの状況認識(Real-Time Situational Awareness)を実現できます。

これは、防衛組織・エネルギー業界・重要インフラ企業にとって非常に有用な仕組みです。


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