コードを書く前に:私たちが必ずお客様にお聞きする5つの質問

多くのプロジェクトは、最初から「答え」から始まります。

「システムを作りたい」
「ダッシュボードが欲しい」
「ソフトウェアを機械と連携したい」

Simplicoでは、この最初の一歩をあえて少しだけゆっくり進めます。

それは、開発をしたくないからではありません。むしろその逆です。
私たちの経験上、

コードを書き始めるタイミングが早すぎることは、システム開発において最も高くつく失敗の一つだからです。

アーキテクチャ設計やデータベース、ハードウェア連携の話に入る前に、
私たちは必ず 5つの基本的な質問 から始めます。

これらは技術的な質問ではありません。
「考えを整理するための質問」です。

目的は一つ。
正しく動くが、目的を外したシステムを作らないためです。


質問1:このシステムは、どの「意思決定」や「行動」を楽にするべきですか?

多くの場合、お客様の要望は「機能」から語られます。
しかし私たちは「意思決定」に注目します。

ダッシュボードは目的ではありません。
APIも目的ではありません。
自動化でさえ、目的ではありません。

本当に重要なのは次の点です。

  • 今、判断が遅い・不安定・属人化している意思決定は何か
  • その判断を行うのは誰か
  • 判断が遅れたり誤った場合、何が起きるのか

良いシステムは意思決定を静かに支えます。
悪いシステムは、画面だけを増やします。


質問2:ソフトウェアが存在しなくても、この問題は残りますか?

この質問は、会話を一度立ち止まらせます。
それは健全なサインです。

もし明日、システムが存在しなかったら:

  • 問題はまだ存在するでしょうか
  • それはプロセスの問題か、コミュニケーションか、責任範囲でしょうか

ソフトウェアは「現実を拡大」します。

  • 整理されたプロセス → 速くなる
  • 整っていないプロセス → 混乱が拡大する

だからこそ、ソフトウェアなしで問題を理解することが重要です。


質問3:情報はどこで始まり、どこで終わりますか?

製造業や複数部門、機械を含むシステム統合では、
問題の多くはコードではなく 境界の曖昧さ から生まれます。

私たちは次を整理します。

  • 情報は誰・何から生まれるのか(人/機械/外部システム)
  • 途中でどのように変化するのか
  • どこで判断・報告・アクションに変わるのか

これにより、

  • 自動化すべき部分
  • 人が担うべき部分
  • ハードウェア連携が本当に必要な部分

が自然に見えてきます。

良いシステムは境界を尊重します。
悪いシステムは、すべてを一つにまとめようとします。


質問4:今後2〜3年で「確実に変わる」ものは何ですか?

多くのシステムはすぐには壊れません。
事業が変わったときに、静かに使えなくなります。

私たちは次を確認します。

  • 比較的変わらない部分
  • 変化が予想される部分(数量、法規、取引先、設備、市場)

これが、

  • ハードコードを避ける箇所
  • 設定として持たせる箇所
  • 将来の設備更新に耐える設計

を決める基準になります。

柔軟性とは、すべてに備えることではありません。
どこを柔軟にするかを選ぶことです。


質問5:このシステムが「機能している」と、どうやって分かりますか?

提案書やKPIではありません。
日常業務の中でです。

  • 何が楽になったか
  • 何を説明しなくてよくなったか
  • どんな小さなストレスが消えたか

簡単に説明できない成功は、
たいてい複雑すぎるシステムの兆候です。


私たちが使う意思決定フロー

以下は、初期の打ち合わせでよく一緒に描くシンプルなフローです。

flowchart TD
  A["ビジネス上の課題・目的"] --> B{"意思決定の問題か?"}

  B -- "はい" --> C["誰が意思決定するのか?"]
  B -- "いいえ" --> D["プロセス・役割を先に整理"]

  C --> E["不足している情報は?"]
  E --> F{"ソフトウェアなしで解決可能か?"}

  F -- "可能" --> G["プロセス・ルール改善"]
  F -- "不可" --> H["システム境界を設計"]

  H --> I["ソフトウェア中心で設計"]
  I --> J["価値がある場合のみハードウェア連携"]

どのタイミングで相談すべきでしょうか?

もし、次のように感じているなら、それは良いタイミングです。

  • 問題はあるが、まだ言語化できていない
  • 提案されたシステムが重すぎると感じる
  • ソフトとハードを連携したいが、将来が不安

仕様書や要件定義がなくても構いません。
まずは状況を整理するところから始められます。


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