ISA-95 vs RAMI 4.0:日本の製造業はどちらを使うべきか(そして、なぜ両方が重要なのか)
日本の製造業で DX(デジタルトランスフォーメーション) や スマートファクトリー が進む中、よく聞かれる質問があります。
工場システムの設計は ISA-95 と RAMI 4.0、どちらを採用すべきか?
結論から言うと、この問い自体が正確ではありません。
ISA-95 と RAMI 4.0 は競合する考え方ではなく、異なるレイヤー・異なる目的を扱うフレームワークです。日本の製造現場で長期的に安定し、改善し続けられるシステムを構築するには、両者を正しく組み合わせて使うことが重要です。
本記事は以下の方を想定しています。
- 工場長・製造部門責任者
- 情報システム部・生産技術部
- MES/スマートファクトリー導入を検討している日本の製造業
ISA-95とは何か(日本の製造業向けに整理)
ISA-95(国際標準:IEC 62264)は、製造業における縦方向統合のための標準です。
難しい言葉を使わずに言えば、
ISA-95 とは、ERP・MES・現場システムがそれぞれ「何を担当し、何を担当しないか」を明確にするためのルールです。
ISA-95 が定義するポイントは以下です。
- 業務系システム(ERP)と製造現場システムの責任分界
- 生産情報の共通言語(データモデル)
- 意思決定の時間軸(計画/実行/制御)
ISA-95のレベル構造(現場目線)
| レベル | 役割 | 代表例 |
|---|---|---|
| Level 4 | 経営・生産計画 | ERP、会計システム |
| Level 3 | 製造実行管理 | MES、MOM |
| Level 2 | 現場監視・制御 | SCADA |
| Level 1–0 | 実機制御 | PLC、センサー |
ISA-95の本質は非常にシンプルです。
ERPは計画する
MESは実行を管理する
SCADA/PLCは機械を制御する
この境界が曖昧になると、システムは属人化し、保守・改善が困難になります。
RAMI 4.0とは何か(なぜ日本でも注目されるのか)
RAMI 4.0(Reference Architecture Model Industrie 4.0)は、ドイツの Industry 4.0 構想から生まれた 参照モデルです。
RAMI 4.0 は「誰が誰に指示を出すか」を決めるものではありません。代わりに、次の問いに答えます。
設備・製品・データを、ライフサイクル全体でどのようにデジタル表現するか?
RAMI 4.0 は 3次元のキューブ構造で表されます。
- 階層(製品/装置/ライン/工場/企業)
- ライフサイクル(設計 → 導入 → 運用 → 廃棄)
- アーキテクチャ層(Asset → Information → Business)
日本で RAMI 4.0 が有効な場面は以下です。
- デジタルツイン
- 高度な設備管理
- OEMが混在する工場
- 将来のグローバル展開
ISA-95 と RAMI 4.0 の違いを整理する
| 観点 | ISA-95 | RAMI 4.0 |
|---|---|---|
| 主目的 | システムの秩序・責任分界 | 資産のデジタル表現 |
| 形 | ピラミッド | 3Dキューブ |
| 重視点 | 製造実行 | データと意味付け |
| 主な利用者 | MES設計者・SIer | スマートファクトリー設計者 |
| 単独利用のリスク | 機能不足 | 過剰設計 |
覚え方
- ISA-95:誰が何をするか
- RAMI 4.0:それは何者か
ISA-95だけでは不十分な理由
ISA-95 は非常に堅牢な考え方ですが、
- デジタルツイン
- AI分析
- スマート設備
といった概念が一般化する前に策定されました。
そのため、ISA-95 だけでは以下が不足します。
- 設備の意味情報(セマンティクス)
- ライフサイクル視点
- 将来拡張性
RAMI 4.0だけに頼る危険性
一方、RAMI 4.0 は設計指針であり、運用ルールではありません。
ISA-95 を無視すると、
- ERPが直接設備に影響を与える
- ベンダー依存が強まる
- 現場運用が複雑化する
といった問題が起きやすくなります。
日本の製造業に最適なアプローチ
ISA-95で「秩序」を作る
- ERP・MES・現場の責任分界
- 安定運用
- 改善しやすい基盤
RAMI 4.0で「将来性」を持たせる
- デジタルツイン
- スマート設備対応
- 長期的な拡張性
ISA-95は“背骨”
RAMI 4.0は“神経系”
日本の工場での具体例
- ERP:生産計画・原価管理
- MES:進捗、品質、停止管理
- SCADA:設備制御
- RAMI 4.0:設備のデジタルモデル化
結果として、
- 現場は安定
- 改善は継続可能
- DXが現実的に進む
どこから始めるべきか
中小〜中堅製造業の場合
- まず ISA-95 に沿った構造整理
- 必要最小限の MES 導入
- 段階的に RAMI 4.0 を取り入れる
「いきなりスマート化」は失敗の原因です。
まとめ
ISA-95 は 製造システムの基盤
RAMI 4.0 は 将来に向けた拡張の指針
日本の製造業が持続的に進化するためには、
両者を正しく理解し、段階的に組み合わせることが重要です。
ご相談について
もし、
- MES導入や刷新を検討している
- ERPと現場の連携に課題がある
- スマートファクトリーを現実的に進めたい
このような課題があれば、設計段階からの整理が成功の鍵になります。
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