デジタル行政サービスが本番稼働後に失敗する7つの理由
日本におけるデジタル行政サービスは、「業務効率化」「住民利便性の向上」「人手不足への対応」といった大きな期待を背負って導入されます。しかし現実には、本番稼働後に定着せず、形骸化したり、現場で使われなくなるケースが少なくありません。
本記事では、日本の中央省庁・自治体プロジェクトで実際に見られる事例をもとに、デジタル行政サービスが本番稼働後に失敗する7つの主な理由を整理します。
デジタル行政サービスの基本ワークフロー(End-to-End)
以下は、住民や事業者が申請してから行政判断・通知に至るまでの標準的なデジタル行政サービスの流れです。多くの失敗は、この流れのどこかが設計不足、または分断されていることに起因します。
flowchart TB
A["住民 / 事業者"] --> B["デジタルサービスポータル"]
B --> C["本人確認・権限管理"]
C --> D["申請・届出"]
D --> E["ケース管理・業務ワークフロー"]
E --> F["担当課・職員"]
F --> G["既存システム / 行政データベース"]
G --> F
F --> H["審査・決裁"]
H --> I["結果通知・ステータス更新"]
I --> A
E --> J["SLA・進捗管理"]
J --> K["運用・レポーティング"]
重要なポイント
- 住民が目にするのはポータル画面だけだが、成功の鍵は裏側の業務・連携・運用設計にある
- 日本のGovTechでは、部局ごとに分断されたシステム構成が失敗要因になりやすい
1. 紙の申請書をそのままオンライン化してしまう
多くのプロジェクトは、既存の紙様式をそのまま電子化するところから始まります。
よくある状況
- 決裁フローが従来のまま長い
- 添付書類はスキャンPDF
- 裏側では職員が手作業を継続
失敗の本質: 悪い業務プロセスをデジタル化しても、問題は拡大するだけです。
2. 住民視点ではなく組織構造で設計されている
行政組織は縦割りですが、住民の体験は一続きです。
よくある状況
- サービスごとに別サイト
- 同じ情報を何度も入力
- どの課が担当か分からない
失敗の本質: 組織最適が住民体験を犠牲にしています。
3. レガシーシステム連携が不十分
行政サービスは住民基本台帳、税、福祉など既存システムに依存しています。
よくある状況
- 職員による二重入力
- システム間で状態が不一致
- リアルタイム連携ができない
失敗の本質: 初期段階での連携設計不足です。
4. 本番稼働後の運用を想定していない
「導入」がゴールになり、運用設計が後回しになります。
よくある状況
- 運用責任者が不明確
- 監視や障害対応が整っていない
- 改善サイクルが回らない
失敗の本質: システムには運用モデルが不可欠です。
5. 本人確認・権限管理が弱い
行政サービスの信頼性は「誰が何をできるか」に依存します。
よくある状況
- 共用アカウントの利用
- 不必要に複雑なログイン
- システム外での本人確認
失敗の本質: セキュリティと使いやすさの両立に失敗しています。
6. 現場の業務変革・定着を支援していない
優れたシステムでも、現場が使わなければ意味がありません。
よくある状況
- 紙運用が残り続ける
- 職員がシステムを避ける
- 窓口対応が減らない
失敗の本質: テクノロジーだけでは行動は変わりません。
7. 短期プロジェクトとして設計されている
行政システムは制度改正や人事異動を前提に設計する必要があります。
よくある状況
- 業務ルールがハードコード
- ベンダーロックイン
- 制度変更に弱い
失敗の本質: 短期視点が長期リスクを生みます。
まとめ
日本のデジタル行政サービスが失敗する理由は、技術力不足ではありません。業務設計、システム連携、運用設計が軽視されていることが本質的な原因です。
デジタルサービスは単なるIT導入ではなく、長期にわたる行政インフラとして設計・運用されるべきものです。
次回は、日本の自治体・省庁向けに、実際に定着するデジタル行政サービスの設計原則を解説します。
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