日本の自治体が「本当に必要とする」Vertical AI活用ユースケース

日本の自治体(市区町村・都道府県)は、共通した課題に直面しています。

  • 人口減少・高齢化による職員不足
  • 行政サービスの高度化と業務量の増加
  • 長年運用されてきた基幹系・業務系システム(レガシーシステム)

AIは注目されていますが、自治体におけるAI導入の多くは PoC(実証実験)止まり で終わっているのが現実です。その主な理由は、AIを「技術起点」で導入し、実際の行政業務フローに組み込めていないことにあります。

そこで重要になるのが Vertical AI(業務特化型AI) です。

Vertical AIは、チャットボットや汎用モデルから始めません。代わりに、以下を起点とします。

  • 実際の行政業務
  • 法令・条例・ガイドライン
  • 既存システムとの関係
  • 説明責任・監査対応

その上で、AIを業務プロセスの中に安全に組み込むことを目指します。

本記事では、日本の自治体が現実的に導入でき、効果を出しやすいVertical AIのユースケースを整理します。


日本の行政における「Vertical AI」とは何か

自治体向けVertical AIのユースケースは、次の条件を満たす必要があります。

  1. 明確な行政業務プロセスと結びついている
  2. 既存の基幹・業務システムと連携できる
  3. 職員の業務を支援する(置き換えない)
  4. 判断根拠を説明・再現できる(Explainable)
  5. 法令・監査・情報セキュリティ要件に適合する

これらを満たさないAIは、実運用には耐えません。


1. 許認可・申請業務支援(Permit & License)

自治体でよくある課題

  • 申請書類の量が多い
  • チェック作業が属人化
  • 審査に時間がかかる

Vertical AIの活用例

  • 申請書・添付書類から必要情報を自動抽出
  • 条例・要綱に基づくチェックリスト照合
  • 不備・不足書類の指摘
  • 審査判断の参考情報を提示(自動承認はしない)

効果

  • 審査時間の短縮
  • 判断基準の平準化
  • 最終判断は必ず職員が実施

2. 住民問い合わせ・苦情対応のトリアージ

課題

  • Web、電話、窓口、メールなど窓口が分散
  • 担当部署への振り分けが属人的
  • SLA管理が困難

Vertical AIの活用例

  • 問い合わせ内容の自動分類
  • 緊急度・重要度の判定
  • 担当部署の自動候補提示
  • 重複案件の検出

効果

  • 初動対応の迅速化
  • 部署間連携の改善
  • 単なるチャットボット以上の実用性

3. 職員向け内部ナレッジAIアシスタント

課題

  • 法令、通知、マニュアルが散在
  • 新任職員の立ち上がりに時間がかかる

Vertical AIの活用例

  • 条例・要綱・内部規程の横断検索
  • 出典付きの回答生成
  • 業務文脈に沿った要約
  • 利用履歴の記録(監査対応)

ポイント

  • 外部公開しない内部専用AI
  • 情報統制・権限管理が前提

4. 福祉・給付業務のケース支援

課題

  • 申請件数が多い
  • 判定条件が複雑
  • 公平性・説明責任が重要

Vertical AIの活用例

  • 事前スクリーニング
  • 異常値・リスクパターン検出
  • 職員向け確認ポイント提示

重要:最終判断は必ず職員が行う(Human-in-the-loop)


5. 監査・立入検査・指導計画の高度化

課題

  • 定期巡回型で非効率
  • 人的リソース不足

Vertical AIの活用例

  • 過去データに基づくリスク評価
  • 検査優先順位付け
  • 職員の巡回計画最適化

6. 行政報告書・政策検討支援

課題

  • 報告書作成に時間がかかる
  • データが部門ごとに分断

Vertical AIの活用例

  • 複数システムのデータ統合
  • 傾向分析・要約
  • 首長・管理職向け意思決定支援

なぜこれらのユースケースは成功しやすいのか

  • 業務フロー起点で設計されている
  • 既存システムを前提としている
  • 人の判断を前提にしている
  • 監査・説明責任を考慮している

失敗例の多くは、AIを「完成品」として導入しようとする点にあります。


ユースケースから自治体AI基盤へ

自治体はAIを単発のツールとしてではなく、
共通のVertical AI基盤として整備することが重要です。

  • データ基盤
  • ワークフロー
  • 認証・権限制御
  • AIサービス
  • 監査・ログ管理

これにより、AIは「実験」から「行政インフラ」へと進化します。


Reference Architecture:日本の自治体向けVertical AI

flowchart TB
  citizen["住民 / 事業者"] --> channels["行政チャネル
Web · 窓口 · 電話 · メール"]
  officers["職員"] --> officerUI["職員業務システム"]

  channels --> gateway["API / 連携基盤"]
  officerUI --> gateway

  gateway --> bpm["ワークフロー / ケース管理"]
  gateway --> idm["認証・権限管理"]

  bpm --> ai["AIサービスレイヤ"]
  ai --> policy["法令・条例・業務ルール"]
  ai --> audit["監査ログ / 追跡"]

  bpm --> human["人による確認・承認"]
  bpm --> systems["既存行政システム"]
  systems --> data["データ基盤"]
  data --> ai

日本のGovTechに適したオープンソース構成例

  • Django / FastAPI – 行政アプリ・API
  • PostgreSQL + PostGIS – 信頼性の高いDB
  • Camunda / Flowable – 行政ワークフロー
  • Ollama / vLLM – オンプレミスLLM
  • LangChain / LlamaIndex – RAG構成
  • OpenSearch / pgvector – 検索・ナレッジ
  • Keycloak / OPA – 認証・ポリシー管理
  • Prometheus / Grafana – 監視・可観測性

オンプレミス、ガバメントクラウド、ハイブリッド構成に対応可能です。


まとめ

日本の自治体におけるVertical AIは、先進性を競うものではありません。

重要なのは、安全で、説明可能で、現場で使えることです。

成功する自治体は、最も高度なAIを導入する自治体ではなく、
行政の実態に合ったAIを設計できる自治体です。


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